解決事例

Case

遺産分割後、遺産中の不動産の持分を放棄した事例

背景

Aさんの祖母(X氏)が亡くなり、Aさんの母親が既に亡くなっていたために、Aさんが、おば(Bさん)、いとこら(Cさん、Dさん、Eさん)と共に相続人になりました。

なお、Aさんは祖母X氏と養子縁組もしていたため、養子としての相続分(4分の1)と母の代襲相続人としての相続分(4分の1)の合わせた2分の1が法定相続分となりました。遺産は、預貯金額約1500万円の他、祖母X氏が第三者と共有していた土地の共有持分もありました。Aさんとしては、共有持分は不要なので、他の土地の共有者に引き取ってほしい、という要望を持っていました。

弁護士の関わり

Aさんから依頼を受け、遺産分割の調停を申立てました。調停申立書が裁判所から相手方であるBさん、Cさん、Dさん、Eさんに送達されたのを受けて、Bさんから当事務所に、当方の要望どおりの協議に応じる、と連絡があり、不動産の共有持分はAさんが取得し、残りの預貯金は法定相続割合に従って分ける、という内容で遺産分割協議が成立したため、調停は取下げました。

その後、Aさんが取得した土地の共有持分を他の共有者に移すべく、他の共有者と連絡を取ろうとしたのですが、話が進まなかったことから、内容証明郵便で持分を放棄する意思を他の相続人に通知したうえで、Aさんの登記名義を他の相続人に移転するために、登記引取請求訴訟、という訴訟を起こしました。他の共有者は訴訟に対して特に反論もせず期日に出席することも無く、当方の請求通りの判決が下りて、無事、Aさんの登記名義を移転することができました。

所感

共有状態になっている不動産の共有持分、というものは、持分権者の一方的な意思で放棄することができます。放棄された共有持分は、他の共有権者に帰属し、他の共有権者の共有持分が増えることになります。

ただ、一方的に放棄できる、とは言っても、他の共有者が登記手続に協力してくれない場合には、自分の共有持分を他の共有者に移転することを求める訴訟を起こす必要があります。訴訟においてこの請求が認められれば、他の共有者の協力が無くとも、自分の共有登記を他の共有者に移転することができます。遺産中に不動産の共有持分が含まれていて、どうすればよいか分からずお困りの方は、遺産分割・共有持分放棄に関して経験豊富な当事務所にご相談ください。