解決事例

Case

不在者財産管理人制度の活用により危険な隣地の取得に成功した事例

 背景

Aさんのお住まいの隣地に、空き地になっている危険な空き地がありました。その空き地の登記事項証明書を取得してみたところ、通常であれば登記事項証明書の「権利部」というところを見れば誰が所有者であるのかわかるのですが、この権利部自体が無く、どんな土地であるかが書いてある表題部、という部分しかありませんでした。

ただ、表題部に、一応、所有者の名前だけが記載してありました。所有者として登記されている方(X氏)は、近所のご高齢の方のお話だと、戦後間もなく、結核で死亡しているようでした。Aさんとしては、土地が崖になっているため、危険防止措置を施したいが、手出しができず困っていて、できれば、この土地を取得して、危険防止措置を施したい、という思いを持っておられました。

弁護士の関わり

Aさんから依頼を受けて、生存しているか亡くなっているかわからない方の財産を管理する役割を負う、不在者財産管理人を選んでほしい、という申立を裁判所に起こしました。なお、法律上、既に亡くなっていて相続人が誰もいない財産を管理する、相続財産管理人、という制度もあります。

本件でも、当初は相続財産管理人の申立を検討したのですが、現実的にはX氏が既に亡くなっていることはほぼ間違いなかったのですが、法的にその点が確認できない、ということで、不在者財産管理人の選任申立をおこなうこととなりました。申立後、そのまま当事務所の弁護士が不在者財産管理人に選任されました。その後、裁判所の許可を受けて、X氏の不在者財産管理人である当事務所の弁護士とAさんとの間で崖地の売買契約を締結し、Aさんは崖地を取得することとできました。価格は、当事務所と連携する不動産業者に査定してもらい、路線価800万円から整地費用700万円を差引いた100万円となりました。

所感

本件のように、所有者がどこの誰であるのかまったくわからないような土地であっても、法的手続をとることで取得できる場合があります。また、所有者がいるのかいないのか、相続人がいるのかいないのか、いる場合誰なのか、弁護士において調査することもできます。調査をしてからでないと、相続人と交渉していけばいいのか、相続財産管理人や不在者財産管理人選任の申立をおこなえばよいのか、わかりません。近隣の危険な隣地や空き家にお困りの方は、財産管理事件に関して豊富な経験を有する当事務所にご相談ください。